もう1度~私と先生と桜の木~
「…よーたくん…」
「ごめんな。奏。
お前のことに首突っ込んで。
俺、お前の先生ってだけなのにな。
でも…どうしても我慢できなかった」
今までずっとテルくんから目を離さなかったよーたくんが
そこで初めて私を見た。
よーたくんは少し眉を下げて苦笑いをしていた。
私はブンブンと音が鳴りそうなくらい首を横に振る。
「ううん。全然問題ないよ」
「そっか」
安心したように笑うよーたくん。
そしてまた、テルくんのほうを向いてしまう。
その背中があまりにも大きくて。懐かしくて。
ああ、この後ろ姿がスキだった、と昔のことを思い出してしまう。
あの、裏庭の桜をただ見上げるよーたくんの後ろ姿。
何度、その背中に抱きつきたいと思ってしまったのだろう。
「どうして…っ!!」
テルくんは頭を抱え、髪の毛をグシャグシャにする。
こんなに取り乱すテルくんを私は初めて見た。
「どうしてあなたはそんなに奏のことを気にするんですか…っ!!!」
本当は、私が1番聞きたかったと思う。
どうして、ここに現れて、私を守ってくれるのかと。
そこまでしてもらえる覚えは私にはないというのに。
「好きだから」
「…え?」
「奏のこと、好きだから…!!
好きなヤツを守りたい、傷つけたくない、って思うのは当たり前だろ!?」