もう1度~私と先生と桜の木~






講義を終えて、近くの喫茶店に入る。

コーヒーを注文して、はあ、と一息つく。


カウンター5席。

テーブル2席。

それだけしかない小さな喫茶店。


そしてここは、テルくんとの思い出の場所。


ここで、告白されたのだ。


『好きです。付き合ってください』


あまりにもシンプルな言葉で。

その頃、よーたくんのことがまだスキだったけど、

でもテルくんに惹かれつつあるのも事実で。


迷いはなかったかと聞かれれば

それはゼロではなかったけど。

でも私はOKした。


今思えば私は賭けていたのかもしれない。

テルくんと付き合うことでよーたくんを忘れられることを。


カランコロンとドアが鳴る。


「マスター、いつもの」


慣れた様子でそう注文して奥のテーブル席に私を見つけたテルくんが手を上げる。


「早かったね」


「うん。まあね」


今日はテルくんとの話し合い。

恐らく…最後の。









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