もう1度~私と先生と桜の木~






この場所を選んだのはテルくんだ。

思い出の場所、と言ったのは何も告白されたところだからじゃない。


デートの待ち合わせ場所に度々なってたし、

ここでゆっくりコーヒーを飲みながら、それをデートだと称してたこともあった。

私とテルくんの付き合っていた時間の中で、

もしかしたらここの喫茶店にいた時間が1番長いかもしれない。

だからこの喫茶店は私たちの思い出の場所なのだ。


そしてここを選んだのはきっと、

この前のように邪魔がはいらないようにするためだと思う。



「…お待たせしました」


「ありがとう」


コーヒーが運ばれてきて、

テルくんは一口飲む。

そしてほっとした表情をした。



「…ごめんね、テルくん」


「何が?」


テルくんのことだ。

私が何を言いたいか分かってるはず。

でもあえてそれを聞いてくるのは、

もしかしたら私を試しているのかもしれない。



「テルくんのしたことを、許す許さないじゃなくて、

私は私自身が許せない。

だから、別れてほしいの」


類も碧も、私には別れよう、なんてことは言えないと言っていたけど。

甘いよ、2人とも。

私だって少しは成長してるんだから。

いつまでも自分に甘い私じゃないんだよ。









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