もう1度~私と先生と桜の木~
「奏の責任なんかじゃない」
「私の責任だよ」
「違う…違うんだ」
テルくんは俯いて首を横に振る。
「だって、そうだろ?
奏に好きな人がいるのを俺は知ってたんだ。
それでも一緒にいてほしい、って俺は言った。
苦しくても、辛くても、それは俺が選んだ道だった。
だからああいうことになったのが、そういう感情からきてたとしても、それは俺の責任だろ…?」
「…テル、くん…」
髪の毛の間から見えるテルくんの顔は、あまりに悲しげで。
苦痛そうに歪んでいた。
「ごめんね、テルくん」
「謝るなよ。
俺は楽しかったよ。…奏と一緒に過ごしたこの1年間」
「…私も」
その言葉に、ウソはなかった。
時々よーたくんを思い出すことはあった。
でも、テルくんと一緒にいて、
つまらなかったと思う日はなかった。
「いろいろ…ありがとね」
「最後にその言葉が聞けて良かったよ」
テルくんが顔を上げる。
その目には涙が浮かんでいて。
「…勝ちたかった…」