もう1度~私と先生と桜の木~






「…え?」


「奏をそんなに夢中にさせるそのよーたくんに勝ちたかった。

でも…無理だよ。

あんなにカッコイイなんて俺の予想外だった」


そう言ってテルくんは笑う。


「奏、ちゃんと幸せにしてもらえよ。

俺が心配する必要もないくらい、幸せになれ」


コクンと頷く。


「俺が恋しくなったら遠慮せずに俺のところ来るんだぞ」


なんてな、テルくんはまた笑って立ちあがった。


「じゃあな、奏」


「うん。バイバイ」


ポンポンといつものようにテルくんは私の頭を撫でて、

カランコロンとまたドアを鳴らして出て行った。


その音があまりに寂しくて。

自然と頬に涙が伝った。


この1年間は本当に充実していたと思う。

私の知らなかったこと、知らないもの。

大切なもの。

たくさん、テルくんに教わった。


初めて付き合った人が、

テルくんで良かったと私は心の底から思ってるよ。


だからテルくん。

次に付き合う人は私みたいな人間じゃなく、

ちゃんとあなたを愛してくれる人と幸せになって。


私からの最後のお願いだよ。



1年間、ありがとう。…テルくん。









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