もう1度~私と先生と桜の木~
仕事中もやっぱりよーたくんのことが気になって。
いないのは分かってるし、
恐らく来ないのも分かってる。
でも、この期待を捨てきれなくて。
「奏ちゃん、もう上がっていいよ」
「…はい」
正直、終わりだと言われた時はほっとした。
これであとは帰るだけ。
もうヘンにドキドキしないですむ。
「お疲れ様です」
着替えて自転車を押しながら歩き出す。
このへんは人通りが多くて、自転車に乗ってると危ないのだ。
そうして歩きながら、今日も人が多いなあなんてぼんやりしていて。
だから突然
「…へっ!?」
腕を掴まれた時は飛び上がるくらいビックリした。
「あ、やっぱり奏ちゃんだ。
覚えてる?俺のこと」
「よーたくんの友達の…」
「そうそう。翔馬だよ!」
「はい、覚えてます…」
「ねえ、翔馬ぁ?
その子誰ぇ?」
今まで翔馬さんの影になって見えなかったけど、そこに女の人がいた。
「あ、悪い。
俺、今からこの子と飲むから今日はもうここでバイバイな」
「え!?何言ってるんですか?」
「まあまあ、いーからいーから」
翔馬さんに背中を押される。
「なんなの!?もうっ!最低っ!!」
一緒にいた女の人は私をキッと睨んで帰っていく。
私、全然関係ないのに…