もう1度~私と先生と桜の木~
*****
高校生最後の日のことだった。
卒業証書をもらった私は、裏庭の桜の木の下にいた。
今から約3年前。
入学式で咲き乱れていた桜。
でも今日はまだ、咲いていない。
蕾ばかりの桜。
でも、私は咲いているときより、蕾のときの桜のほうが好きだった。
だって…あなたが言っていたから。
――『俺はな、キレイに咲いてる桜も好きだけど。
でも、その前のほうがもっと好きなんだ。』
『なんで?』
『だって、今から咲いてやろう!って力にみなぎってるだろ?
そういう姿見せられたらさ、俺も頑張らなくちゃ、って元気もらえるじゃん。
だから俺は蕾をつけた桜のほうが好きなんだ』
ニコッと笑ったあなたが輝いて見えた。
きっと私があなたに恋に落ちたのは…この一瞬だった。