もう1度~私と先生と桜の木~
番外編―翔馬と理子―
―番外編―
【翔馬と理子】
「あ~あ…こんなことしてる場合じゃねーのに…」
深夜まで営業しているバーを出る。
一見すればそこはバーだが、なんせケーキがうまい。
もちろん、俺が見つけた店じゃない。
…元カノ、理子が俺に教えてくれた店。
「ホント、何やってんだか…」
なあ、知ってるか?理子。
お前と別れてからの俺ってば、めっきり独り言が増えたんだ。
…ジジクサイ、って笑うよな、お前なら。
はあ、と溜め息をついて。
性に似合わず夜空を見上げてみる。
「…曇ってんじゃねーよ」
見事に真っ黒。
こういうときってさ、定石じゃん。
まん丸、もしくは三日月が夜道を照らし、
満点の星が輝く、って。
これって、神様が言ってんのかな?
俺に。
似合わないことはするもんじゃないぞ、って。
そんなことを考えて、
視線を前に向けた。
それと同時に満月が雲の切れ間から顔を出していたことなんて、
俺が知る由もない。