もう1度~私と先生と桜の木~
あの2人は、うまいこといっただろうか。
この俺がわざわざ気を利かせてやったんだ。
そうなってないとマジで恨む。
「…電話、してみよっかな」
別れて3年。
幾度となく理子に電話しようと試みた。
でも結局、最後のボタンを押すことができず1度も連絡していない。
もしかしたら、
番号が変わっているかもしれない。
もしかしたら、
着信拒否にされてるかもしれない。
そう考えたら怖くて…
怖すぎて1歩を踏み出す勇気が出ない。
でも、なんだか今日なら掛けられそうな気がする。
だって、ちょっと考えたら気づけたことだったんだ。
俺にはもう、失うものはないって。
なぜなら、失いたくないものを、
もうすでに失っていたから。
5年…俺と理子が付き合っていた年月。
あまりに長く。あまりに短い。
どっちなんだと聞かれても、どっちもだとしか言えない。
理子…俺、もういいオトコになれたかな?
あの頃より少しは、進歩したかな?
もし今、俺のことが少しでも頭にあるなら。
お願いだ。
電話に、出てくれ…っ!!