もう1度~私と先生と桜の木~




でも俺は、冷静だった。


「どうした?理子」


だって、明らかに理子の声は震えていて。

それはアイツが泣いている、ということで。

ただ会いたいとだけ言われれば喜ぶが、

でもそういうワケにはいかない。



『…翔馬ぁ…』


「理子?今どこにいんの?」


このままじゃ埒が明かないと判断した俺は理子の居場所を聞き出す。


言われた通りの場所へ行くとそこは7階建てのマンション。

すぐに分かった。

ここ…理子の新しい家だ。



オートロックを開けてもらい、

部屋のインターフォンを鳴らす。

でも応答がない。


恐る恐るドアノブを下げる。


「…開いてる」

カギがかかっておらず


「理子?入るぞ?」

そのまま部屋へと入る。


入った瞬間、胸が苦しくなった。

この匂い…理子の匂いだ。


いっきに昔に戻された。

…そんな気分。




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