もう1度~私と先生と桜の木~
しばらく俺の腕の中で泣き続けた理子は
落ち着いたのか、震えが止まった。
そしてそのままの状態で
「……お父さんが死んじゃった…」
そうはっきりと言った。
「…ウソ、だろ?」
思ってもみなかった言葉に、
理子から離れて顔を確認する。
でも、その顔は真剣そのもので。
「どう、して…」
「癌だった。覚悟はできてるつもりだった。
でもやっぱり、本当にいなくなっちゃうと…」
言葉に詰まる理子は目頭を押さえる。
「お父さんにはもう、会いに行ったのか?」
ううん、と首を横に振る理子。
「じゃあ、もう少ししたら会いに行こう。
俺も、一緒に行くから」
同棲する前に理子の両親にあいさつに行った。
だからお父さんのことも知ってる。
穏やかで、とてもいい人だった。
「だから、もう少し、泣いていいぞ」
そう声をかけると。
理子は俺の胸で声をあげて泣きだした。