もう1度~私と先生と桜の木~
悲しんでいる暇もなく、
次の日はいろいろな手配で忙しさに追われた。
会社には
『婚約者の父親が亡くなってしまって…』
と言った。
ウソをついたつもりはなかった。
だって、理子はきっと…いや、絶対に俺の婚約者になるんだから。
「ごめんね、翔馬くん。
手伝ってもらっちゃって。」
「いえ。俺にはこれくらいのことしかできないので」
葬儀の準備。
夜にはお通夜。
そこにはたくさんの人が訪れて。
それだけでお父さんの人柄がよく分かった。
俺は理子と結婚してるワケでも
付き合ってるワケでもない。
だから当然、遺族の席に座ることもできず、
ただ外から大勢の人に別れを惜しまれているお父さんを見ていることしかできなかった。