もう1度~私と先生と桜の木~
「なあ、類」
「なに?」
「俺、1つすっげえ疑問なことがあるんだけど」
「ん?」
「奏ってさ…」
「せんせー、類、掃除サボらないでください」
と、そこへ張本人、奏がホウキを持って怖い顔をしながら近づいてきた。
「「ゴメンナサイ」」
2人してペコッと頭を下げる。
なんせ、怒った奏は怖い。
「で、さっきの続きは?」
なぜか俺も掃除を手伝うハメになっていて。
まあいいか、そんなことを思いながら類の横でちょこちょこと床を掃く。
「なんでさ、奏は俺のこと、先生って呼ぶんだろう」
「はっ?!何それ!
よーたくん、一応先生なんだから呼ばれて当たり前じゃん!」
一応、というワードにひっかかったが、
そこにはあえてツッコまず、会話を進める。
「いやいや、確かにそうだけど。
でも俺の場合9割の生徒が名前で呼ぶだろ?
なのに奏は名前で呼ばないじゃん。」
接点も何もない生徒なら何も違和感はないけど。
奏は違う。
アイツは部活も一緒で。
今やクラスの担任だ。
近いにもほどがあるくらい近い生徒の1人。
なのにアイツは絶対に俺を
『よーたくん』
とは呼ばない。
「そんなの俺が知るワケないじゃん。
本人に聞いてみれば?」
「…類」
冷たすぎるぞ、お前!