もう1度~私と先生と桜の木~
「なあ、奏」
「なんですか」
「…なんでもない、です」
今度こそ、なんで先生って呼ぶのか聞いてやろうと思ったのに。
なのに振り返った奏の眉間にシワが寄ってたから。
あわてて言葉を呑み込んだ。
「今日の先生、いつも以上に意味分かんない」
そう言った奏は碧のところへ行ってしまう。
え…俺、意味分かんないのか?
しかもいつも以上って…
「奏に聞けた?」
そこへ類が戻ってきて。
「いや、無理だった」
「仕方ないなあ。
俺が聞いといてあげるよ」
「おっ!さすが次期部長候補!
頼りになるねー」
「おだてても何も出ないよ」
「生徒になんも求めてないっつーの」
そんなやり取りをしていると
「邪魔です、先生」
奏が机を持って俺を睨んでいた。
「…ゴメンナサイ」
本日3回目の奏への謝罪。
俺…なんで奏に対してこんな弱腰なんだろう。