もう1度~私と先生と桜の木~




「奏はどこまで?」


「終点まで…」


「マジで!?結構遠いんだな」


帰宅ラッシュあとの電車。

空席がチラホラ見える中、私とよーたくんはドアの近くに立っていた。


よーたくんと目が合わないように、ずっと外の景色を見ている。

ただでさえ、2人きりでドキドキしてるのに、目が合ったらきっと、ドキドキに拍車がかかって。

顔が真っ赤になるに決まってるから。

無言というところが少し、気まずかった。


でも、それもしばらく経つとなんともなくなる。

ただ、見慣れた景色をぼーっと眺めていた。



「…なあ、奏」


「なんですか?」


「体調でも悪いのか?」


「へっ?」


なんで?

なんで急にそんな質問がくるんだろう。



「いやあさ、焼き肉食べてる途中から急に元気なくなってたみたいだし。

それに今も黙ってぼーっとしてるから」


少しだけ、嬉しかった。

よーたくんが私の些細な変化に気づいてくれていたことが。







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