もう1度~私と先生と桜の木~




「元気は全然あるよ。

ちょっと考え事してて」


「考え事?」


「そう。

手が届きそうなのに、全然届かなくて。

もう少しな気がするのに、全然辿りつかないの。


辛いなあ、苦しいなあ、って。」


そう言うとよーたくんは首を傾げる。

それもそうだろう。

私だって自分が何を言っているのかよく分かってないもん。



「とにかく、高校生は悩み事が多いんだよ」


「そっか。

いろいろ悩むのは大事なことだと思うけど、悩み過ぎるなよ。


いつでも相談乗るよ。

俺、奏の担任だし、顧問だし。」


よーたくんはいつもの顔で笑う。

何度見ても思う。


私はこの、よーたくんの笑顔が好きだ。

大好きなんだ。

…どうしようもなく。



できることなら私の隣で…

そこまで考えて、首を横に振る。


あまりにも贅沢過ぎる、その願い。

叶うはずもない、その想い。


少し眠そうなよーたくんの横顔を見ていたら。

胸がぎゅーっと締め付けられた。








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