もう1度~私と先生と桜の木~
「…かーなーでちゃんっ」
見慣れた後ろ姿をいつもの場所…裏庭の桜の木の下で見つけて。
迷わず声をかける。
奏はビクッと驚いた反応をしたあと、
「…なんですか、先生」
と、言って不機嫌そうな顔をしながら振り向いた。
「ごめん、驚かせて」
「いや、いいんですけど、別に…」
花壇に座っていた奏の隣に腰をおろした。
「部活、なんで今日は1時間後開始なの?」
今は授業後。
いつもならもう部活が始まってる時間だ。
でも今日は授業が終わってから1時間後開始にした。
「んー…?
なんとなく、かな」
「教師失格じゃ…」
「冗談に決まってるだろ」
いや、正しくは半分冗談なのだ。
「実はさあ、俺しょっちゅう怒られてんだよ。」
「誰に?」
「他の先生に」
「??」
「バスケ部員の提出物が全然出てないんですが、って。」
「困った人たちだね」
奏は苦笑いを浮かべた。
もうホントにしょっちゅう文句を言われる。
だから今日の1時間で提出物をできるだけやってほしい、
そう思ったのだ。