もう1度~私と先生と桜の木~





「…先生」


「ん?」


2人して黙って桜を見上げていると、

奏が沈黙を破った。



「今日ずっと思ってたこと、聞いてもいい?」


「ん、いーよ」


そう返事をしたのになぜか奏は黙ったままで。


「どうした?」


「いやあ、なんか年上の人にこういうのって軽々しく聞いていいのかなあ、って思って」


「いいよ、気にしなくて。

気になることは聞かないと。」


そうだね、奏はそう言って桜を見上げる。


もう夏が近づいている。

ついこの間まで、桜色の花びらを散らせていたそれは、

今はもう葉桜へと化していた。



「一見すれば、いつもと変わらないけど。

でも、なんか違うなあ、って思ったの。


なんかショックなことでもあった…??」


横目で俺をチラッと見る奏。

思わずふっと笑ってしまった。


「…そっかあ」


「えっ?」


「うん、ビックリした。

自分でも隠してる、つーか気にしてないつもりだったのにな。」


奏は何も言わない。


「ここだけの話にしてくれるか」


「あ、はい」


「実はさあ、彼女と別れたんだよ」







< 58 / 222 >

この作品をシェア

pagetop