もう1度~私と先生と桜の木~
「…先生」
「ん?」
2人して黙って桜を見上げていると、
奏が沈黙を破った。
「今日ずっと思ってたこと、聞いてもいい?」
「ん、いーよ」
そう返事をしたのになぜか奏は黙ったままで。
「どうした?」
「いやあ、なんか年上の人にこういうのって軽々しく聞いていいのかなあ、って思って」
「いいよ、気にしなくて。
気になることは聞かないと。」
そうだね、奏はそう言って桜を見上げる。
もう夏が近づいている。
ついこの間まで、桜色の花びらを散らせていたそれは、
今はもう葉桜へと化していた。
「一見すれば、いつもと変わらないけど。
でも、なんか違うなあ、って思ったの。
なんかショックなことでもあった…??」
横目で俺をチラッと見る奏。
思わずふっと笑ってしまった。
「…そっかあ」
「えっ?」
「うん、ビックリした。
自分でも隠してる、つーか気にしてないつもりだったのにな。」
奏は何も言わない。
「ここだけの話にしてくれるか」
「あ、はい」
「実はさあ、彼女と別れたんだよ」