もう1度~私と先生と桜の木~
「…ゴメンナサイ」
「え?なんで謝るの?」
俯いて顔を上げない奏。
「だって…私、無神経だったな、って思って。
先生辛いはずなのに私…」
「いいんだよ、奏」
いいんだ、別に。
「辛くないから」
「いや、でも…」
「最初から分かってたことだったしね。
相手が浮気してたことなんて」
俺はウソをついた。
生徒の奏に弱いところなんて見せるワケにはいかなくて。
だから笑顔を浮かべる。
「むしろ、スッキリして今は爽快な気分だよ。
これで晴れて俺は自由の身だ」
そう言って笑って見せる。
なのに奏は何も言わない。
俯いたままだから表情も分からない。
だけどそのうちに奏の背中が震えだして。
「…奏?」
呼びかけても返事がない。
もしかして…
「泣いてるのか?」
首を小さく横に振る奏。
でも顔をあげようとはしない。
やっぱり、泣いてるんだ。
多分、いやきっと、
俺の代わりに泣いてくれてるんだ…