もう1度~私と先生と桜の木~
「奏はさあ」
「なんですか」
顔を手で覆う。
こんな顔、スキな人に見せられない。
「すっげえ、優しい子だな」
よーたくんが優しい顔で笑っているのが分かる。
「泣けない俺の代わりに、泣いてくれるなんて」
よーたくん。
違うよ。そうじゃないよ。
あの私の涙はそんなキレイな涙なんかじゃないよ。
涙の理由は私自身も分からないけど。
ただ1つ、分かることがあるとすれば。
それは、よーたくんの代わりの涙、なんてキレイなものじゃないってことだ。
でも、そんなこと言えなかった。
理由は明白。
よーたくんに嫌われたくなかったから。
「奏、1つ宣言しとく」
「なんですか」
よーたくんが立ち上がったのを感じた。
「お前はいいオンナになる。
…うん、絶対だ」
顔を覆っていた手を下ろすと、
そこには自信満々の顔で私を見下ろすよーたくんの顔があった。