もう1度~私と先生と桜の木~




「…ーで?奏ぇー?ねえ、聞こえてますかあー??」


「…えっ!?

うん、何?」


場所は変わり体育館。

部活真っ最中だ。



「はあ…なんも聞いてなかったでしょ?」


「いや、そんなことは…」


「じゃあ何言ってたか言ってみてよ」


「今日の夕飯なんだろう…」


「んなワケないでしょ!

あたし、そんな食いしん坊じゃないんですけど!」


ああ、やっちゃった。

碧、ちょっと怒ってるし。



「もういい。

どうせ、奏はあたしの話なんてどうでもいいって思ってるんだもんね」


「そんなこと…!」


「いいよ、いいよ。

無理しなくても。

だって自分でも分かってるもん。

自分の話がつまらないことくらい」


碧は拗ねモードに突入。

こうなったらもう、どうしようもない。

それはこれまでの付き合いで十分に承知している。


「…奏さあ」

しばらくはだんまりを決め込むと思っていた碧は突然口を開く。


「なんかあった?

部活始まってからずっとボーっとしてるよ?」


「…なんにもないよ」


ウソをついた。

本当はよーたくんの


『お前はきっといいオンナになる』


あの発言が嬉しくて、

よーたくんのことばかりが頭に浮かんで。

だから碧の声も耳に入らなかった。


でも、言えない。

こんなこと。






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