もう1度~私と先生と桜の木~




私は決めていた。

よーたくんが好きだと気付いたあの日から。


どれほど仲が良い人でも、

どんなことがあろうとも、

この、秘めた気持ちを、

誰にも言わないと。


そう、決めていた。


理由は簡単だ。

否定されたくない。


ただ、それだけ。


小さくて、ちっぽけなこの気持ちを、

自分以外の誰かに否定されることだけは、どうしてもイヤで。


だから誰にも言わないことを決めた。


それに話したところで

『叶うはずがないんだから』

そう言われるのは明白で。

それを言われたら私は絶対に


『そんなこと分かってる!!』

と、怒鳴ることも明白で。


それはあまりにも無様な姿な気がして。


分かり切ったことをする必要性はどこにもない。


誰かに口外されることは当たり前にイヤだ。

今ここで、碧によーたくんが好きだと打ち明けたとして。

碧が誰かにバラすことは絶対にないと思う。

私は碧を信じてる。


でも、私は私を守りたくて。

だから…ごめんね、碧。


今はまだ、何も言えないの。

でも大人になったら言うよ。

そしたら笑い飛ばしてね。


「奏も意外とミーハーなところあるんだね」


そう言いながら。





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