もう1度~私と先生と桜の木~
「違う違う!
今のところ、強引にいく必要ないだろ!
しっかり回り見て、判断しろ!」
よーたくんの怒声が体育館に響く。
いつも体育館の反対側では何かしらの部活が活動をしているがテスト期間中の今は誰もいない。
「ストップストップ!!
今のはいったん、後ろに戻すところだろ!
なんでディフェンスいるのにサイドなんだよ!」
選手たちはみんな、汗が噴き出て、髪の毛がシャワーを浴びた後みたいに濡れている。
同じくよーたくんも、汗をかきながら大声で指示を出している。
なんだかいつもと違う。
気合いの入り方が全然違う。
今度こそ、去年果たせなかった決勝進出の夢が叶うかもしれない。
「10分休憩はいるぞー!」
その言葉で選手はみんなその場に倒れこむ。
みんなのタオルを配りに碧と走る。
「おー奏、さんきゅー」
類にタオルを渡すと倒れこんだまま、顔にタオルをかける。
「あー…ヤバイ。
もう動けねー」
「気合い、入ってるもんね、先生」
「そうだな。
でも、分かる。
俺もよーたくんと一緒だもん、気持ちは。」
「みんなも一緒だよ。
みんな、決勝まで行きたいって思ってるよ」
「…うん、そうだな」
ムクッと上半身を起こした類は
「絶対決勝まで連れてってやるからな」
と、マンガで聞いたことのあるようなセリフをサラッと言ってのけた。
でもその姿は
ほんの少し、カッコ良かった。