もう1度~私と先生と桜の木~
「奏、見つかった?」
「ううん。ない!
もう…サイアク」
部活が終わり、着替えを済ませて荷物を整理していると気がついた。
数学の宿題がないことに。
さっきから探してるけど見つからない。
「教室なんでしょ?
いいよ、ここで待ってるから取りに行ってきなよ」
「ごめんね、碧」
碧を残して教室へダッシュする。
時間が時間なだけに廊下の明りはほとんど消えている。
とりあえず職員室に顔を出す。
「あれ?奏?」
「あ、教室の鍵…」
入口の近くにたまたまいたよーたくん。
つい1時間前にいろいろあった手前、顔を見れない。
でもよーたくんは気にしていないようで、
「さっき類が忘れ物したから、って持って行ったよ。
まさか奏もか?」
と、いつもの顔をしている。
くっそぉ…
これが大人の余裕ってやつか!
いや、よーたくんのことだから、
鈍いだけかもしれない。
なんて思いながらも
「忘れ物…かもしれません」
と、意味の分からない返しをして、また廊下を走りだした。