もう1度~私と先生と桜の木~




「…あっ」


突然振りかえった類。

当然のごとく見つかった。



「あ、いや、忘れ物…」

えへへ、と笑いながら自分の机の中から宿題を取り出す。


そして


「じゃあ…また明日」

類は1人になりたいんじゃないか、

そう思って急ぎ足で出て行こうとする。


そうすると


「なあ!」

類に呼び止められる。



「な、何?」


「話、聞いてたんだろ」


「え…いや、聞いてない、けど」


「いいよ、ウソつかなくて。

カッコ悪い姿、見せちゃったな」


類はふっと笑って見せる。

でもその顔は悲しそうで。


「そんなことないと思うけど…」


「いやあ、でもフラれたとこ見られたワケだし…」


「っていうか類、彼女いたんだね」


類の悲しそうな顔を見ていられなくて。

今すぐ逃げ出したかったけど、

そうもいかないことは百も承知で。

だから、自分の机に腰を下ろした。


ごめんね、碧。

ちょっと待っててね。






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