もう1度~私と先生と桜の木~
「ねえ、類。聞いてもいい?」
「ん?」
類はこちらに背中を向け、
窓の外を見ている。
「どうして彼女がいること内緒にしてたの?」
「んー…?
理由なんてない、かな。
言う必要もないと思ってたし」
「なんかそれ、寂しいんですけど」
おどけた口調でそう言って軽く類を睨む。
だけど類は何も言わない。
「…じゃあ、逆に言うけど」
「何?」
「奏が好きな人いるのに誰にも言わないのはなんで?」
ドキッとした。
振り向いた類があまりにも真剣な顔をしていて。
好きな人なんていない。
そんなウソ、通用しない気がした。
だけど、決めてたから。
よーたくんを想う気持ちを誰にも言わないこと。
それと
よーたくんを想う気持ちに封をすること。
だから私は平然とした顔で言い放った。
「何それ。
好きな人なんていないよ?」