もう1度~私と先生と桜の木~
「いやあさ、でもよーく思い出してみろよ?
桃ちゃんとお前が別れたって話聞いてさ、普通涙まで流すか?
それに他にもいろいろあっただろ?
お前だって薄々感付いてんじゃねーの?」
「んなこと言われたって、
奏は優しいから普通じゃないかもしれないけど、泣いてくれるんだよ。
アイツは…そういうヤツだから」
もしかしたら俺は、そう思いたかっただけなのかもしれない。
「お前はどうなの?
会うたびに奏ちゃんの話してるけど。」
「どうって何がだよ」
「好きか好きじゃないかの話に決まってんだろ」
「好きに決まってんだろ。
でもそれはあくまでも生徒として、って意味だけど」
「んなこと言っちゃって~
本音はどーかなあ~」
ニヤニヤと笑う翔馬。
「今のが本音に決まってんだろーが」
俺はちゃんと認識してるんだから。
自分の立場、ってやつを。
俺は奏の先生。
担任であり、顧問。
奏はきっと、親以外の1番近い大人の俺に懐いてくれてるだけ。
翔馬が言う感情なんてきっと、抱いてない。
俺の知ってるアイツは、
そういうヤツだから。