もう1度~私と先生と桜の木~




「よーたくんさ、なんかいいことあった?」


「え?なんで?」


先頭を走っていた類に追いつくと、

類にそう言われ首をかしげる。



「いやあさ、なんか元気っつーか…奏に声かけてたから」


「え?」


「ここ2日間くらい、よーたくん奏のこと避けてたじゃん?

あれ、結構奏気にしてたんだよ。

でも今日声かけてたから、なんかあったのかなーと思って。」


おいおい、俺。

何生徒に気にされてんだよ。

俺、先生なのに。

何やってんだろ…



「なんもないよ。

普通だよ普通」


「そーなんだ。

奏、気にしてないフリしていつも通りによーたくんに話しかけてたけどさ。

本当はすっげえ気使ってたんだよ。


だからさっきのあいさつとか、めちゃくちゃ喜んでると思うよ」


「そう、なんだ」


俺は徐々に走るスピードを落として行った。

そしてトボトボと歩きながら奏と碧のところへ戻る。



「あれ?もう走るのやめたの?」

碧にそう聞かれ頷く。


「奏ちゃん」


「え…なんでちゃん付け?」


「ごめん…なさい」


俺が勝手に意識とかしちゃってたから。

お前に気遣わせてたなんて知らなかった。

そう思って素直に頭を下げた。


でも返って来たのは


「…なんか、気持ち悪い」


そんな予想もしない一言だった。







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