もう1度~私と先生と桜の木~




「…お疲れ」


正直、試合が始まってからの記憶がない。

それくらい、一生懸命に声を出して、応援していた気がする。


おかげで、試合が始まる前に決めた

『笑顔で終われる試合をする』

というのを達成できた。


でもやっぱり…悔しい。



「よく、頑張ったと思う。

俺が今お前らに言えることはそれしかない」


格上の相手だった。

それに違いはない。

でも、俺の選手たちはよく走ったし、声も出てた。


相手がどれほど背の高いヤツでも

誰も怯まなかった。


だからこそ、笑顔で試合を終えることができた。


でもでもでも。

誰の目からも涙が溢れていて。


笑っているのに泣いていて。

一緒に戦った仲間を称えながら抱き合っている。



「よーたくん」

頬に涙の筋をたくさんつけた類が俺に頭を下げる。


「ありがとう…ございました」


顔を上げた類は満面の笑みで。



「負けたけど、悔いはないよ。

3年間、よーたくんについてきて本当に良かった。」


そう言った類を俺は無言で抱きしめた。


あと1ゴール。

その1ゴールは遠く。

掴めそうで掴めなくて。


類たち3年の夏は、終わった。










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