もう1度~私と先生と桜の木~
『え!?ホントに??』
『うん、ホント』
琴音は頬を赤く染め、頷く。
その顔は恋する乙女の顔で。
少し、うらやましかった。
私にはこんな顔、できないから。
『でね、奏よーたくんと仲良いじゃん?』
『仲がいいかは微妙だと思うけど…』
そんな私の言葉はスルーされて、琴音は続ける。
『よーたくんを呼び出してほしいの』
『え?私が?』
『うん。こんなこと、奏にしか頼めないからさ…』
お願いっ!琴音はそう言って顔の前で手を合わせる。
『でも…』
『よーたくんを呼び出してくれるだけでいいの!
…ダメ、かな?』
またあのおねだり顔をする琴音。
そんな顔されたら
『…分かった』
承諾するしかないじゃん。
ほんの10分前のことを思い出し、思わず溜め息が溢れた。
ホントはイヤでイヤで仕方がない。
だって、自分の好きな人が告白されるのを手伝わなきゃならないんだよ?
しかも、自分のものすごく身近な人からの告白。
いくら琴音を応援するって決めたからって、
いくらよーたくんへの気持ちに封をするって決めたからって…
…イヤに、決まってるじゃない