もう1度~私と先生と桜の木~




授業が終わって


「はあ…」

と溜め息をついてから立ち上がった。


「ね、先生。」

教室から出たところでよーたくんを呼び止める。


「今日授業後、勉強教えてよ」


そう言うとよーたくんの顔がパァと明るくなる。

そんな姿にズキッと胸が痛んだ。



「おう!任せとけ!」


「じゃあ授業後、図書室で…」


「分かった」


どこか浮足立ったよーたくんの背中を見つめていると

急にジワッと目頭が熱くなってきて。


顔を手で覆う。

そしてふぅ…と息を吐きだした。


それでも涙はひいてくれなかったけど。

でも熱いモノをこらえて席に戻った。



「なあ、奏。

次の授業ってさー…」


イスに座ると同時に振り向いた類。



「うん、何?」

でも類は途中まで言ったきり、黙ってしまう。



「お前、目…赤いよ」


「え?マジで?

さっき目かいちゃったからかなあ」


あはは、と笑って見せる。


「…そっか」

類は何か言いたげな視線を私に送っていたけど。

でも結局、何も言うことはなかった。







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