裏生徒会部
凪さんは少し距離をとってくれたものの、月森くんは変わらずくっついている。
一番、離れて欲しかったのに。
「えっと、月森くんも……」
「僕は浅井さんの一番近くにいたいので離れませんよ?」
「うっ………」
満面の笑みでそんなことを言われ、言い返せなかった。
「なんかえぇとこ悪いけど、着いたで。浅井さん家」
中西くんにそう言われ、窓の外を見ると私の家の前で止まっていた。
私が鞄を持って降りると、なぜか凪さんも一緒に降りて来る。
「ほなな~。浅井さん、凪ちゃん」
「また明日、学校で会いましょう」
「う、うん…?」
ドアが閉められると、車はそのまま真っすぐに走って行った。
…あれ?
凪さん、ここにいるんだけど。
置いて行っていいのだろうか。
「それでは静音様。これから宜しくお願い致します」
「何をですか?」
「私、本日より静音様の専属メイドとなりましたので、なんでも仰ってください」
「………へ?」
さっぱり状況が掴めない中、凪さんは玄関のドアを開け「どうぞ」と待っている。
凪さんは私の専属メイド…?
何がどうなったらそうなるの。
「あの…凪さん」
「あ、静音様。私に敬語を使うのは遠慮して頂きたいです」
「え。はい…じゃなくて、うん」
押されるようにして家の中に入った私。
凪さんは「失礼します」と軽くお辞儀をすると私の鞄を持ち、リビングの方へと歩いて行った。
…聞くタイミングを逃したかも。