裏生徒会部
次は本題。
遠回しに聞いたりとかはしない。
「お前、なんで悠をあいつらと一緒に苛めてるんだ?」
「それは………レギュラーになるため…です」
「悠を裏切ってまでなりたいのか?」
この質問に言葉では答えず、下を向いて首を横に振った。
吉野にとって、悠は親友でもあって憧れの存在でもある。
親友と憧れ、その2つを裏切ってまでレギュラーになりたい、なんて思うわけもなかった。
「それじゃあ、なんで止めない?なんで助けない?」
「……………」
「確かにお前は悠に害は与えてない。でも、あいつらと一緒にいて、近くにいるのに止めないなんて…同罪だろ」
それが悠にとっての一番の傷つくことだと思う。
親友だった奴が止めてくれない、助けてくれない…裏切る。
「僕は……僕…は…怖かったんです。また昔に戻るのが……嫌だった…だから……」
「昔に戻るのが嫌?…お前は昔から全く変わってないだろ」
なんでも悠に頼って、ずっと後ろに隠れたまま。
初めて俺と悠と出会った時からずっと。
憧れのまま、近づこうともしない。
「そんなんじゃ、お前はずっと悠には追いつけねぇよ」
「追いつけない……」
「でも、行動を変えるだけで近づけるかもしれない」
「行動を…変える?」
「お前がこれからどうするかだ。まず、今の問題からな」
今の問題。
悠を裏切ったままにするのか、助けるのか。
助けるためには自分も傷つくかもしれない。
嫌になるかもしれない。
でも、それを乗り越えられないと近づけない。
吉野は顔を上げ、真っ直ぐな瞳で俺を見る。
「……一ノ瀬先輩……ありがとうございます…!僕、自分がしたい行動、見つけました!!」
「そう。良かったな」
「はい!失礼します!」
なんに対しての「ありがとう」なのかはわからないけど多分プラスにはなった…と思う。