裏生徒会部


いつきくんは手をポンッと打ち、「あぁ」と声を漏らした。


「んー…つまりは恋人という段階が必要なわけですね」

「そ、そう!そういう段階的な順序がね」

「そうか。じゃあ恋人になってくれ」

「いやいやいやそういうことじゃなくて…!!」

「ん?どういうことだ?」


一くんは首を傾げると、鞄から1冊の本を取り出した。

それをパラパラと捲り、止めたページを私に見せてくる。


「この漫画では会ったばかりでも恋人になっている。別の漫画では結婚もしていた。別に変なことではないんだろ?」

「それは漫画だからだよ」


そりゃ世の中、出会ったその日に恋人になったり、結婚を約束したりする人はいるかもしれない。

でもそんなのは大抵は漫画の中の話で。

現実はお互いのことを少しでも知って、好きになって、恋人になって…

最終的に結婚となるわけだ。

そう一くんに説明すると、あまり納得した様子はないが解ってはくれた。


「俺様は静音のこと好きだからな。あとは静音を惚れさせればいいんだな?」

「え、ええっと…うん……まぁ…。というより、私のこと…その…本当に好きなの…?さっき初めて会ったばかりなんだけど」

「勿論だ。えーとなんだっけ」

「一目惚れというやつですか」

「そうそうそれ!とにかく俺様は静音が好きなんだよ」


そんな堂々と「好き」だなんて言われると照れる。

前にも一目惚れを誰かさんにされたが、2度もあるなんて信じられない。

だって私にそんな魅力が全くないことは自分が一番わかっている。


「静音。ちょっとこっち向け」

「え、んっ…!?」


すぐ目の前には一くんの顔。

キスされたのかと思ったが寸前で止まっていた。


「どうだドキドキしたか?」


私から離れるとニヤリと笑う。


「こういうのでドキドキして好きになるんだろ?」


そう言い、また先程の漫画を見せてくる。

表紙を見る限り、どうやら少女漫画のようだ。

私は勿論、固まったまま。顔は熱い。


「これからはこの日本の少女漫画ってのを参考にして、たくさんドキドキさせて俺様に惚れさせてやるからな!いつき、お前も手伝えよ」

「はいはい」


これから毎日、私の心臓は持つのだろうか。



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