裏生徒会部
先程の緊張感はなくなったようで、匂いに釣られるがままに咲也はリビングのドアを開けた。
「ん?え?もう帰ってきたの?」
台所の前には三角巾を頭に巻き、エプロンをした男。
手には凶器である包丁を持っている。
咲也に「凶器を持ってたら逃げろ」と言ったはずなのだが、逆に近づき、男にダイブした。
「うおっ!こーら。さく、危ないでしょうが」
「かずー!!おかえりー!!会いたかったー!!」
「ははっ、そうかそうか。よしよし、ただいま」
男は包丁をまな板の上に置き、手を広げる。
「さぁ、しゅうもおいで」
「いくか」
「2年ぶりなのに相変わらず冷たいね…。パパショック…」
「つーか土足であがるなよ」
「…あ。つい、な?」
この男は、一ノ瀬 和也(イチノセ カズヤ)。
俺と咲也の父親だ。
2年ぶりというのは、親父は仕事上ほとんど日本にいることはない。
そのため、1、2年に一度会うというのは珍しくないことだ。
海外でホテル泊まりをしているせいでつい、土足のままあがったよう。
仕事というのはカメラマン。
主に風景を撮るのが専門で、旅行会社のパンフレットなどの写真を撮る。
あとは「奇跡の1枚」と言われるような写真を撮り、写真集を出したりしている。
業界では有名で、一般でもそこそこ知名度はあるようだ。