裏生徒会部


仁は俺の襟から手を離し、咳払いをした。


「…一ノ瀬くんやっと取れましたよ、ほら」


そうして何かを摘まんでいるかのような手の形をし、それを俺に見せてくる。

が、どう見ても何も摘まんではいない。

悠はじっと仁の手を見ると笑う。


「よ、良かったですねー柊也先輩!なんかよくわからないゴミが取れて!粘着力凄かったですもんね!」


なんだ、よくわからない粘着力の凄いゴミって…

誤魔化すにも程がある。

悠と仁は「ははは」と謎の笑い声を出しながら、女の顔を窺った。

女はなんとも言えないといった顔でじっと見ている。


「えーっとさぁ行きましょうか。柊也先輩、仁先輩」

「そうですね。早く講堂へ行きましょう」


もう逃げる気満々だ。

仕方ない…俺も戻るしかないか。

そう立ち上がった瞬間


「ちょっと待ってください」


と女が声をかけた。

そりゃあ流石にこれはバレただろう。


「先輩…浅井静音先輩はどこにいるんですか?」

「「え?」」


まさかの質問に悠も仁も声を揃えた。

今までの事はスルーで、まさかの静音の場所を尋ねるだけとは思ってもいなかったからだ。



< 462 / 739 >

この作品をシェア

pagetop