裏生徒会部


「今少しお時間いいですか?」


そう言って、俺の手元に気付いたのか「食べながらでも大丈夫です」と付け加えた。

ここで話すのかと思いきや、どうやら移動するようで、しょうがなく佐野について行く。


「……すみません。移動までしてもらって」

「で、話って?」


着いた場所は第3グラウンド近くの人気の少ない所。

佐野は少し周りを気にしているのか、周囲を確認した。


「えっと…あの……好きです。私、一ノ瀬さんのことが好きです」

「え」

「それで、付きあって…もらえませんか?」


全く想像もしていなかった話。

奏十からすれば予想的中なんだろうが。


「…悪いけど、無理。付き合えない」

「えっ…。ど、どうしても駄目…でしょうか?」

「あぁ」

「お友達から、とかでも駄目ですか?」


中々に食い下がらない。

こういう時、仁とか他の奴らはなんて言ってるんだ。

数ヵ月前の俺だったら多分「無理」と言ってそのまま放って教室に戻っただろう。

が、今は誰かさんの影響のせいなのか言葉を探している。


「悪いな、無理だから」


その誰かさんを好きになったことすら自分でも信じられないのに…

他の奴をまた好きになる可能性なんて全くないとしか思えない。



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