裏生徒会部


様子を窺っていると、ぱっと此方を向いた。

その勢いのまま、急に手を握られる。


「えっ…え!?」

「俺には隠し事なんてするな。なんでも話せよ。絶対、お前の力になるから」

「一くん…」

「俺達、幼馴染みだろ?」

「……ん?」

「ん?」

「いや、幼馴染みではないよ」

「…あ。そうだった」


「失敗した」と呟く一くん。

わかった。さっき、一くんが後ろを向いて何をやっていたのかが。

また少女漫画を読んで、台詞を探していたのだろう。

だから「幼馴染み」と。

それに、一くんの話し方が少し違った気がしたし。

なにより、少女漫画にありそうな台詞だ。


「少女漫画?」

「やっぱバレたかー。でも、どうだ?ドキドキしたか?」

「うーん…一瞬ね、一瞬」

「よっし♪」


「一瞬でもいい」とご機嫌な笑顔を見せる。


「で?本当は何かあったんだろ?」

「…えーっと……うん。でも、本当に気にしなくて大丈夫だよ」

「…そうか。まぁ、静音がそう言うならいいけどさ」


先程から握られていた手の力が強まり、一くんと目が合う。

真剣なその眼差しから目が逸らせない。

一くんは一呼吸すると、口を開く。


「…最初は一目惚れだったとはいえ、今は静音の全部が好きだ」

「うん」

「俺様は静音には笑顔でいて欲しいし、たくさん幸せだって感じて欲しい」

「…うん」

「だから、静音が俺様に言ってくれたように、何か困ってるんなら迷わず頼ってくれ」

「……っ」


一くんは私のことをこんな風に想ってくれている。

言葉からも、握られた手の温もりからも、その表情からも伝わってくる。

だから、私も真っ直ぐに返さなきゃ駄目だ。


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