裏生徒会部
しばらくすると、騒ぐ声が止み、再びドアを開ける。
俺と宮井はそっと顔を出し、部室の中を覗く。
「う…うぅ……」
長髪の頭には大きな赤いリボン。
白と赤色で統一されたフリフリとしたワンピース。
そのスカートを握りしめ、目をうるうると潤わせながら、地べたに力尽きたように座る一人の女子の姿があった。
部室内を見渡すが、叫び声をあげていた王子野の姿はどこにもない。
先程まで黙りこんでいた部員達は、再び「キャーッ!!」という声を上げ、携帯を手に持ち、カシャカシャと鳴らし始める。
「王子様がお姫様にっ…!いいっ…いいわっ…!」
「私達の手によってこんなに可愛くなるなんてっ…最高っ…!」
…まじか。あれ、王子野なのか。
短めだった髪が長髪になっているのはおそらくカツラだろう。
美容部員達の手により、ここまで変えられるとは。
驚いたものだ。
「こうなってしまうと思って氷室先輩にお願いしようとしたのですが…」
宮井は氷室という奴に頼みたかったみたいだが、今日はいないようだ。
「とりあえず、王子野を助けてやれよ」
「あの中から私一人でですか!?いっちー先輩は!?」
「俺は絶対パス」
あの興奮しまくっている女子達の中から王子野を引っ張り出すのは無理だ。
やりたくもない。
宮井は一度、俺の顔を見た後、一歩部室へと足を踏み入れた。
「わ、わかりました。つれてきたのは私ですし…。でも、せめて王子くんの制服回収だけはしてくださいっ…!」
「…わかった」
仕方ない。それぐらいは手伝ってやろう。
俺と宮井は意を決して、王子野救出を決行した。