裏生徒会部
氷室にドタキャンをされた俺らは、部室を出てそれぞれ教室に戻ろうとした時、王子野は「えっ…」と声を漏らした。
「どうしたんですか?」
「その…これ……」
王子野は手に持っていた携帯を宮井に渡し、俺も隣から画面を覗いた。
メール画面が映っており、差出人は「姫路 龍司」。
要約すると、今日の放課後に話したいことがある、といった内容だ。
「この人が私の言っていた先輩なんだ…」
「えぇっ!?ほ、本当ですか!?」
頷く王子野。驚き、焦る宮井。
まだ何も王子野を変えることが出来ていない。
その上、宮井が伝手にしている氷室にドタキャンをされ、会えるのは明日。
だが、王子野の話していた相手からは「今日」と書かれている。
なんというタイミングの悪さだ。
「ど、どうしましょうか…。断るのも良くないですし…」
「だよ…ね」
「今日話せばいいだろ」
下を向いていた2人だが、俺の言葉で顔を上げ、此方を見てきた。
「ですが、いっちー先輩。今のままではお相手の好きなタイプには…」
「しょうがねぇだろ。向こうが話があるって言ってきてるんだし。それに俺は王子野は今のままでいいと思うけど?」
「一ノ瀬先輩、そう言って貰えるのは嬉しいんですけど、柚希ちゃんの言う通り、今のままじゃ私は…」
「じゃあ、王子野は昨日みたいな王子野のままでずっとそいつと付き合うのか?それで自分は納得出来るか?」
「それは……」
口籠る王子野。
誰かに嫌われないために、好かれるために自分を偽って過ごす奴をつい最近、俺は見た。
それが辛いことだということも知っている。