ハナウタ
「あれ?楠木1人?」
誰かに呼ばれ顔を上げると、蒼岸君が教室に入り此処の机に向かっているところだった。
最初の彼の問いに僕が答える前に、新しい質問が降ってくる。
「何読んでんの?」
「ファンタジーだよ」
「タイトルは?」
訳知り顔で尋ねる彼に内心首を傾げながらも答える。
「"蒼翼記"だけど…」
「あーやっぱり。
俺も読んだ事あるぜ。それ」
「え…ほんと?」
問われた彼は屈託なく頷いた。
文が長くて堅い上、全然名の出回ってない作家の作品だから、この本を知っている人は少ない。
だから当然、驚いていながら僕も彼もどこか嬉しそうにこの手に持たれている文庫本の話に花が咲く。
やがて話は今日の事に逸れていき、柏原君の話に差し掛かった。
「放課後さ、京介に話し掛けてた女子って…」
「九ノ月サンの事?」
「うん。
あの子楠木の隣の席だったよな?」
「うん。そうだよ」と僕はすんなり頷く。
「楠木と大分タイプ違う気ぃするけど、どうなの?」
どうやら純粋な好奇心と心配してくれているらしい様子で彼が放った問いに、少し目を泳がせてなんと言ったら良いか考えた結果、そのままの現状を話しておくことにした。
「うー…ん…確かにタイプは大分違うけど、これといってどうってことないよ?
……お昼に誘われるのは少しどうしようかと思ってるけど…」
誰かに呼ばれ顔を上げると、蒼岸君が教室に入り此処の机に向かっているところだった。
最初の彼の問いに僕が答える前に、新しい質問が降ってくる。
「何読んでんの?」
「ファンタジーだよ」
「タイトルは?」
訳知り顔で尋ねる彼に内心首を傾げながらも答える。
「"蒼翼記"だけど…」
「あーやっぱり。
俺も読んだ事あるぜ。それ」
「え…ほんと?」
問われた彼は屈託なく頷いた。
文が長くて堅い上、全然名の出回ってない作家の作品だから、この本を知っている人は少ない。
だから当然、驚いていながら僕も彼もどこか嬉しそうにこの手に持たれている文庫本の話に花が咲く。
やがて話は今日の事に逸れていき、柏原君の話に差し掛かった。
「放課後さ、京介に話し掛けてた女子って…」
「九ノ月サンの事?」
「うん。
あの子楠木の隣の席だったよな?」
「うん。そうだよ」と僕はすんなり頷く。
「楠木と大分タイプ違う気ぃするけど、どうなの?」
どうやら純粋な好奇心と心配してくれているらしい様子で彼が放った問いに、少し目を泳がせてなんと言ったら良いか考えた結果、そのままの現状を話しておくことにした。
「うー…ん…確かにタイプは大分違うけど、これといってどうってことないよ?
……お昼に誘われるのは少しどうしようかと思ってるけど…」