ハナウタ
苦笑混じりに付け加えた一言に彼は眉を上げた。


「嫌じゃなきゃ俺らと一緒にいればそっち入んなくて済むじゃん」

「え…全然嫌じゃなかったけど…迷惑じゃないかな…?」


少人数で静かに食事をするのが好きなのは確かだけど…それは彼らも同じはずだ。
だからいつも二人だけで食事をとるのだろうし…



「最初に誘ったの京介の方だし。
俺も女子はぶっちゃけ苦手だけど、楠木は他とちょっと違うっぽいから逆に話してて楽しいし、大歓迎」



日も暮れて朱色を帯び始めた教室の中、僕の目の前で普段クラスメートといる時よりいくらか大人っぽく笑った彼を見、
あぁ、似合うなぁ
なんて関係のない感慨が沸く。



他人に手を引かれるように、誰かが喜んでわざわざ自分を求めてくれる事は純粋に嬉しく、日中の太陽よりも、本当は夕日の方が似合うこの青年の笑顔を前に、つい顔が緩んでしまう自分を自覚しながら、素直に感謝する。


「ありがとう。
じゃあ、お言葉に甘えようかな」






僕を見ていた蒼岸君の顔がぽかんとした変な顔になった理由はよくわからなかったけど、それを問う前に僕達は見回り当番の先生に教室を追い出された。
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