ハナウタ
黙った理由は二つ。




明らかにそれは自分じゃないって事の申し訳なさと、
どちらかと言えばそれは僕が苦手なタイプの子だったって理由。



蒼岸君は僕の考えた事がお見通しだったようにニヤッと笑った。





「全然違うんだろ?」

「…うん」


つい苦笑して返した僕を彼は楽しそうにクックッと抑えるように笑って話を続けた。


「今まで京介が付き合った子ってそんな子ばっかだったんだ。
俺は正直苦手だったけど、今回はどうも平気みたいだし」

「それはよかった」


正直に返したんだけど、蒼岸君はじ、と僕の顔を凝視してきた。


「…えっと、何か?」

「普通さ、"それって女らしくないってことー?"とか言わない?」

「うーん…ある程度は自覚あるから。あんま気になんないしなぁー」



今度こそ彼は声を上げて笑い出した。

自分が男っぽいとは思わないけど、
女の子らしいところがあまり思い付かないのも確かなので。






なんでだろう。



なんでもないささやかな日常は楽しい。


だけど、

この日はいつもより楽しかった。
この夕日に守られた時間を惜しいと感じるくらい、楽しかった。
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