ハナウタ
そりゃあ、授業中あれだけ話を聞かされれば誰でもわかる。
僕はこっくりと頷いた。





「最近、カヤちゃん、京介クンと仲良いよね…よく、話すみたいだし…」







そこまで言った彼女の様子と、その言葉に、ようやくその真意に察しがついた。


「だから…ね?
ちょっと…気を遣って欲しいなー…って…」




早い話が、近付くなと言いたいのだろう。

僕は、いつものように、微笑んで返す。



「柏原は、僕にとって大事な友達だから、不自然に距離を置く事はしたくないな」



なんとなく気まずくなってしまった沈黙を、「そっか…」と言うどこか冷えたその声を残し、彼女は教室を去っていった。











予感。
自分が言った事からくる変化への不安が、押し寄せる。
言われるままに従いたくなかった。

僕にとっては九ノ月サンより柏原の淋しそうな顔を見たくなかった。
ただそれだけ。

九ノ月サンを好きになるかは、柏原が決める事なんだから、友達である僕を巻き込む理由なんて…



「カヤ、カヤっ?」




肩を強く掴まれて顔を上げると、アオがこちらを覗き込んでいた。



「顔色、わりぃけど、なんかあった?」
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