ハナウタ
案の定、その翌日から僕はクラスの女子から疎外される事となった。
といっても、教室ではいつも本ばかり読んでいるから必要な事以外の話をするような特定の相手もいないし、強いて言うならいつも隣の席からほぼ一方的に話し掛けてくる九ノ月サンくらいだったから、そんなに困る事はなかったけれど。
その彼女が中心となっているのは大体予想がつくので(原因も見当がつくし)僕はいつも通りに生活が出来るようにある程度の対策を考えながら生活することになった。
昨日の僕の様子を気にかけてくれていたアオは今日のその状態を見て、あらかた察しがついたようだった。(どうやら柏原をめぐっての柏原の想い人と女子との衝突はいくらか前例があるらしい)
「カヤー、飯食おっぜー」
その日の昼休み、アオと柏原は屋上へは向かわず真っ直ぐに僕の席の前にやってきてそう宣言した。
「あ、うん」
僕の答えとほぼ同じくらいのタイミングでアオは僕の前の席の机をガタガタと動かして僕の机と向かい合わせにして座り、柏原も自然にその動きにならう。
教室にしてくれたのは、
僕がなるべく自分の持ち物から離れなくても良いように。
わざわざ柄にもなく口に出して僕を誘ったのは、
教室で目を丸にして彼ら二人と僕とを交互に見ている彼女達にいつも一緒に食べている事を悟られないため。
彼らの気付かれぬようにさりげなくしてくれる気遣いが嬉しい。