ハナウタ



アオも柏原もいつも通り。

それだけあればこんな生活、僕にはたいした影響なんてなかった。


でも、

実の所、二人で古典の係の仕事をしている時に柏原はそれとなく心配して話を聞こうとしてくれていたし、
アオも口には出さないけどいつも通りの受け答えをする態度の端々にさりげない気遣いをくれていた。



少し申し訳ないのと、心強いような、安心出来るような複雑な心境だったけど、こればかりは僕自身じゃどうすることもできない。









そんな状態で学校生活を送っていたある日。
靴箱から中履きが消えていたため用意していたスペアを履いて教室に向かう。

こういうことも、対処ができると、背を這う薄ら寒い不快の中に、つい楽しさが出てくる。




屈していないと言う事と、なんだかんだで僕が普通に生活しているのが気に食わない彼女らに、どこかの枕みたいに微妙な反発をするのが、僕の英気を保たせていたのかもしれない。








教室に入ると、ここ最近は睨んでくるか無視かしかしなかった九ノ月サン達が、ニヤニヤとこちらを盗み見ている事に気付き、自分の机に視線をやると、すぐに原因に気がついた。






僕の机の上にはしおれた菊の入った花瓶が置いてあった。


こんなこと、実際にする人いるんだ…


半ば呆れ、半ば関心の目で近付いて行くと、丁寧にも僕の机は油性のマジックで様々な罵痢雑言でひしめき合う様だった。


『ブス』
『生きる価値無し』
『ウザイ』
『消えて』
『色魔』
などなど。





うーん、さすがに普段マニキュアとかするほうじゃないし、除光液は持って来てないなぁ…
かと言ってこのまま授業うけると目がチカチカして小説読む気になれなさそうだし…。
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