ハナウタ
僕は、そんな彼女に言う。


｢僕には僕の事情があって、伊沢サンには伊沢サンの都合があったってだけだよ｣

｢そっ…んな…事な…っ｣


泣きじゃくる彼女はもう何を言っているのかさっぱりで、困り果てた所にアオがカーテンを開けて入って来た。


｢あーカヤが伊沢泣かせたー｣


わざと大袈裟に言うアオに伊沢サンが焦ってフォローしようとする。
アオはたいして気にする風もなく｢解決したんなら授業戻んなよ｣と優しく笑った。



おとなしく彼女が保健室を出て行ったのを確認すると、アオはさっきまで伊沢サンが座っていた椅子に腰を下ろす。


｢センセーは心疲労じゃないかってさ｣

｢そか…｣


そこで二人とも言葉を切り、しばらく沈黙が流れる。






そう、気にならなくても、いや、強いショックを受ける事はなくてもストレスは積もっていくもの。
僕は自分がストレスが溜まっているのかどうかがわからない。
でもその中に溜まるストレスが一定のラインを越えると何らかの形ではじける仕組みになっているらしい。

非常に不便なことに。










『暴走』していないだけ、まだ良いのかもしれない。
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