ハナウタ
そこまで思考を巡らせた所で、もう塞がったはずの傷がじくりと痛んだ気がした。
「なぁ、カヤ」
ふと、横にいたアオが口を開く。
「ん?」
「しんどくないか?」
「え…?」
真面目に、でも自然に聞いて来た為に返答に詰まる。
アオは、返事を待たずに続けた。
「俺も、京介も、お前の傍が心地良いから…お前を知りたいから一緒にいるんだ。
何したって拒んだりしないから…寄り掛かってこいよ」
彼の言葉が、意識の中で強い衝撃をもたらしたわけではないと思う。
だけど何故か、僕の目からは涙が止まらなくて、知らないうちに自分を重く沈めていたものが溢れ出したようで、
僕は表情を作る事も出来ず、ただ呆然と涙を流し続けた。
やがてアオが僕をゆっくりと抱き寄せて、ちっぽけな僕はすっぽりと包み込まれてしまって、ただどうしようもなく切ない胸の痛みと、強く優しい彼のぬくもりに、ゆっくりと瞼を閉じただけだった。
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