ハナウタ
学校を出ると、すぐ裏手は海岸だ。

二人で何を話すでもなく、僕は堤防の上を、九ノ月サンは堤防に沿って作られた遊歩道を歩く。

人の少ない海と、その上に広がる白んだ青を眺める。













「あたしのやってた嫌がらせ…なんともなかったわけじゃないよね」

堤防を歩きながら、磯の香りの含まれる風を正面から受けつつ答える。

「物理的な面では迷惑なこともあったかな。
でも、そのくらい」




ふふ、と
笑い声を聞いた気がして目下を見ると、苦笑を浮かべる彼女と目が合った。





「アンタって、ほんとムカつく」



やはり、僕はいじめがいがなかったらしい。

曖昧に笑い、また前を向いた僕に九ノ月サンがさっぱりと言う。





「馬鹿な奴って思ってるんでしょ?
恋愛なんかで、って」





僕は彼女の中でどんな人間として認識されてるんだろう?

恋愛を卑下する気は僕にはない。

ただ僕がそういった感情を他人事として見ているのは確かだけれど。






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