ハナウタ
カヤは、私が彼を好きだと言う事を知っていた。



だから、彼女は口には決して出さなかった。

ただ、見ているだけだった。









その、彼女の視線が、私を不安にさせた。





彼、木賀西君は魅力的な男の子だった。

快活で頭が良く、人間的な意味で理解の広い人だった。



カヤと木賀西君は、二人だけでよく話をしていた。
二人が意識して二人きりなのではなく、平等に歓迎する彼と、普段通りなのに、私ばかりを見ているわけではないカヤと一緒にいるのが、私には居心地が悪かったのだ。

彼はカヤの話に付いて行けている様子で、二人で話している間、私は入っていく事が出来なかった。



彼女が私を厭うたんじゃない。
熱に浮かされた私が今まで憧憬として持っていた気持ちを劣等感と履き違えて彼女を厭うたんだ。




二人が仲良くなって行くのを見ながら、私はただ焦って行くだけだった。






今思い返しても恥ずかしい。

カヤは、彼女らしく彼を愛しただけだった。
以前と変わらずに、私を友人と慕ってくれて、邪険にしようとはしなかったし、
現に彼女は彼が好きだなんて一切口に出さなかったんだ。





私は、彼女に向ける嫉妬で、彼女の私への心くばりがまるで見えなくなっていたんだ。



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